ほぼテキストだけの、素朴なつくりのサイトがある。それが想定以上の売上を記録している。20年近く前にその事実を目の当たりにしたことが、IBFのクリエイティブ事業部を率いるK氏の考え方を変えました。デザインは、売上成果を決める要因の一部にすぎない。
影響が大きいのは、その手前にある「上流設計」でした。
IBF NewsRoomでは今回から、事業部で働くメンバーに話を聞く「事業部インタビュー」を始めます。第一回は、クリエイティブ事業部のマネージャーであるK氏です。
新卒でWebデザイナーとして入社し、自ら希望してWebディレクターへ転身。現在は少数精鋭チームでクリエイティブ領域を担っています。
何を大切にしている事業部なのか。どのような判断を積み重ねて、いまの形になったのか。クリエイティブの仕事に興味をお持ちの方にこそ読んでいただきたい内容です。IBF一筋20年の歩みから伺いました。
■ いま担っているのは、戦略設計からPDCA運用までのディレクション
――いまどのようなお仕事をされているのか教えてください。
一言で言うと、Webクリエイティブのディレクター、マネージャーです。仕事内容としては、サイト分析や市場調査から、訴求やクリエイティブ設計・公開までの進行管理と公開後のPDCA運用を管轄するディレクションになります。
――「制作会社」のディレクターとは違うのでしょうか?
そうですね。単に制作を進行させるのではなく、サイト分析、市場調査、競合調査を通して、そのクライアントが打ち出すべき強みや独自の価値を引き出すところから始めます。そのうえで、反応の取れるWebサイトや広告クリエイティブを開発し、公開後もPDCAを回していく。
そこまでを担っています。
――どのような業界の案件が多いのですか?
これまで幅広い業種を担当してきました。大手企業のECサイトやブランドサイトから、専門性の高い商材まで、業界はさまざまです。
■ 同じ土俵で競わないために、実務経験を先につくった
――もともとWebの道を目指していたのですか?
実家が風力機械製作所を営んでいて、幼い頃から「ものづくり」が身近にある環境で育ちました。ただ、小学生のときに実家の主要取引先が倒産して、お金の不自由さを強烈に感じた経験があります。よいモノを作るだけでは足りない。成果が出て、きちんとお金が流れる仕組みまで作らなければ意味がない。その感覚が、いまも自分の根っこにあります。
そうした中で「何かモノを作る仕事が向いているんじゃないか」と思うようになりました。その中で、当時新しい職業として出てきた「Webデザイナー」を知り、興味を持ったのがきっかけです。
大学のパソコン室や自宅にこもって、本を読みながら独学でPhotoshopやIllustrator、コーディングを覚えました。20年ほど前、大学3〜4年の頃です。
――最初から「一生デザイナーで」と決めていたのですか?
いえ、そこまで固くは決めていませんでした。ずっと同じものを作り続ける作業は自分には合わないと感じていましたし、スーツを着て働くのも避けたかった。学生時代はサッカーばかりだったので、「それ以外に何ができるんだろう」というコンプレックスもありました。
そんな中で、新しい分野だったWebデザインに惹かれていったんです。
――そこからどのようにしてIBFにたどり着いたのですか?
実は、一般的な就職活動にも強い抵抗がありました。みんなと同じ場で評価される形を避けて、どうすれば別のやり方で確実に就職できるかを考えたんです。
当時『孫子の兵法』を読んでいて、「戦わずして勝つ」という考え方に強く共鳴していたんです。新卒の時点ですでに実務経験を持っていれば、そもそも同じ土俵で競う必要がなくなる。就職活動から逃げたというより、勝ち方を先に決めてしまおうという感覚でした。
学歴で勝負するのではなく、「Webデザイナーとしての実務経験があります」と面接で言えれば、確実に評価される。そう考えて、大学3年のときにWeb制作会社でアルバイトを始めました。独学の基礎を評価してもらって採用され、サイト更新などの実務を経験させてもらいました。
――狙い通り、実務経験を先に手に入れたわけですね。
そうです。1年ほど働いて、その会社から正式に声もかけていただきました。ただ、規模の大きな会社だったこともあって、周りの働き方を見て「自分が目指したい方向とは違うな」と感じたんです。もっといろいろな経験ができて、新しい挑戦ができる環境に行きたいと思いました。
また、更新作業をしながら「どれだけ良いサイトを作っても、見てもらえなければ意味がない」と痛感していました。当時のWeb集客の主流はSEOです。SEOとデザインの両方を身につければ、成果の出るサイトを体系的に作れると確信しました。
その両方に強い会社を探して出会ったのが、IBFでした。
■ 転機は、素朴なつくりのサイトが叩き出していた売上だった
――デザイナー時代は、どのような3年間でしたか?
SEO対策とデザインの両方を担当していました。SEOはOJTで学びながら、お客様からの質問対応やコンサルティングもやっていました。実務を通してSEOやビジネスの知識を身につけて、それをコーディングやコンテンツ設計、デザインに還元していく。
ほぼ即戦力に近い形で関わっていたと思います。
当時は連日のように会社や近くの施設に泊まり込んでいました。長いときは5日間くらい家に帰らずに没頭したこともあります。自分の限界を試すような感覚もあって、かなりハードな環境で実績と経験を積みました。
――その後、ディレクターへ転身されます。きっかけは何だったのでしょう?
ディレクションへ移ったのは、自分の強い希望でした。単にデザインを作るだけでなく、SEOと掛け合わせて「成果に直結するWebサイト・デザイン」を設計できる力をつけたかった。作るだけの人より、成果にコミットできる人の方が価値が高いし、お客様や社会からも求められると考えたからです。
――何か具体的な出来事があったのですか?
転機になった出来事があります。当時、アメリカのサプリメント通販を手がけるクライアントをご支援する機会をいただき、そのサイトを見たときに衝撃を受けました。ほぼテキストだけで、デザインとしては本当に素朴なものだったからです。それでいて、相当な売上を記録していました。
それを見て、デザインの美しさそのものは必ずしも成果に直結する最重要要因ではない、と強烈に気づかされました。本当に大事なのは、まず市場(ニーズ)があり、誰に、どんな商品を独自性や専門性を持ったコンテンツで、どんな構造と量で伝えるかです。デザインの前段階にある「上流設計」こそが成果に直結する。
そう確信して、上流工程からデザイン設計できるディレクターになろうと決めました。
■ 「なんとなく」で終わらせずに、言語化して残す
――制作の世界では、作り手の好みやアート的な表現に寄ってしまうこともあると聞きます。
自分の好きな表現を追求したいなら、それは個人のアート作品としてやるべきだと思っています。デザインは違う。感性やセンスだけに頼らず、論理的に追求して構造化すれば、再現性のある成果物は作れると思っています。
デザインは感性(アート)ではなく、目的を達成するための「機能」である。私はそう考えています。
大事なのは、デザインをロジカルに分解して、「なぜその表現なのか」を数値根拠と言語化できるかどうかです。「格好いい」「可愛い」という表面的な評価で終わらせず、その構成要素を分解して数値根拠と言語化で体系化する。そこに差が出ると考えています。
――言語化を強く意識するようになったきっかけはありますか?
ディレクターやマネージャーになった当初は、デザイナーやメンバーへの説明や指示出しにかなり苦労しました。それまでの自分は、経験からくる「流れ」で制作を進めてしまっている部分があって、それをうまく言葉にできない。結果として、お互いにフラストレーションを溜めてしまっていました。
どう説明すればみんなが納得して、同じように再現できるのか。そこに向き合い行き着いたのが、「言語化」と「原則」の大切さです。
それからは、自分が得た知見や思考プロセスを言語化するように心がけ、組織の資産として残すことを強く意識するようになりました。
その積み重ねを集約する場として、社内にポータルサイトを用意しました。マーケティング戦略から考えるクリエイティブ開発で、成果に貢献する戦略的なサイト構築を行うために必要な情報を、判断基準からノウハウまで体系化したものです。
誰が担当しても、ある程度同じ水準で考えられる状態をつくるために、いまも更新を続けています。
■ 少人数で回るのは、設計を引き受けているから
――IBFはこれまでに累計400社以上を支援し、10年以上続くお付き合いも少なくありません。クリエイティブ事業部はそのうちのクリエイティブ領域を、少人数の体制で担っています。なぜ少人数で、長く品質を保てるのでしょうか?
私自身が、コーディング、SEO、デザイン、ディレクション、営業という制作の一連の工程を、すべて実務として経験してきたことが基盤にあると思います。業務の流れや判断基準、ノウハウをチームの中で標準化・仕組化して、言語化されたナレッジに落とし込んでいる。だから無駄のない運用ができます。
――社外のパートナー(制作会社、ライター、撮影スタッフなど)とも多く協働されています。長く良い関係が続く理由は何だと思いますか?
正直、こちらの要求や基準は高くなってしまう面があって、パートナーの皆さんにはいつも感謝と恐縮の気持ちがあります。それでも一緒に進めていただけるのは、IBFが作るワイヤーフレームの具体性と精度によるところが大きいと考えています。
コンテンツの意図や構成、最終的な着地点まで明確に設計したワイヤーフレームをお渡しするので、制作側も迷わずにデザインや実装に集中できる。根幹の戦略設計をIBFが責任を持って行うからこそ、外部のパートナーとも円滑に協働できるんです。
――ディレクターとして、特に印象に残っている案件はありますか?
一つ挙げるなら、大手化粧品グループのブランドサイトリニューアルです。とても重要な案件でしたし、学生の頃に「いつかこういう大企業のサイトに携われたらいいな」と漠然と思っていたことが、実際に叶った瞬間でもありました。
さぞかし気合いを入れて時間をかけなければいけないだろうと身構えていたのですが、実際は違いました。直前に担当した別案件での反省を設計にいかせたことが大きくて、初回のヒアリングを終えた帰りの電車の中で全体の構造が頭の中で組み上がったんです。普通、最初のワイヤーフレーム(画面設計図)の段階では何度も修正や議論が起きるものですが、提案した設計がほぼそのままで承認されました。
結果として送客率が明確に改善し、当時のご担当者が社内で昇進された、というお話も後から伺いました。間接的にでもプロジェクトの成功に関われた、思い入れのある案件です。
時間をかければ良いものができるとは限らない。日頃の反省や本質を捉えていれば、思考は一瞬で結実する。そのことを学んだ、貴重な経験でもありました。
■ AIが進んでも、選ばれているのは設計の思想
――AIによるWeb制作や自動化が進んでいます。それでもクライアントがIBFを選び続ける決定的な要因は何でしょう?
デザインの表面的な装飾だけで差別化するのは、もう難しくなっています。選んでいただけるのは、その前段にある分析や調査、数値データに基づいたコンテンツ設計の思想やメソッドに共感していただけるからだと捉えています。
感性や主観だけに頼るのではなく、データや事実に基づいてコンテンツを組み立て、デザインに落とし込んでいく。この「客観的なアプローチ」こそが、評価いただいているポイントだと確信しています。
――今後、チームをどう成長させていきたいですか?
これまで培ってきた体系的なメソッドや知見を、言語化・システム化して、AIを活用した仕組みへ昇華させていく取り組みを進めています。3C分析から設計、デザイン、コーディングまでを一貫させるフローをメソッドとして体系化し、それをそのままAIアプリケーションとして構築しました。これまで手作業で行っていた業務を、大きく削減できる見込みです。まずはこの活用を進めて、業務の効率化と生産性の向上を図りたいです。
■ 採用では、スキルより先に人間性を見る
――経験の有無よりも人間性を重視されるそうですが、「求める人間性」とは具体的にどういうものですか?
具体的には「誠実」「自立」「コミュニケーション」の3つです。関わる人々や業務に誠実に向き合っていること。依存しすぎず主体的であること。そして周囲とフラットにコミュニケーションをとれることになります。
もう一つ、IBFという会社全体の根っこには「常識を疑う」「ブラックボックス化された構造を解き明かす」という姿勢があります。業界の当たり前とされてきたやり方に対して、あえてアンチテーゼを提示する。世の中の常識を鵜呑みにせず、本質的な課題解決に面白みを感じられる。
そういう価値観を持っていることも大切だと思います。
――これから加わる方には、どのような経験を積んでほしいですか?
指示された作業をこなすのではなく、クライアントやエンドユーザーの視点に立って「本当に成果につながるクリエイティブとは何か」を追求する経験を積んでほしいです。
誰かを介した伝言ゲームではなく、自分自身がクライアントと直接向き合いながら、上流工程からクリエイティブを作り上げたい人にとっては、とても魅力的な環境だと思います。
なおIBFでは、年次や給与によって「マネジメントに進まなければならない」と決めることはありません。「プレイヤーとして極める」「マネジメントを極める」という2つの軸を用意し、本人のスタイルに合わせてキャリアを考えます。途中で方向が変わることも歓迎しています。
■ 大切にしている言葉は「善い人が良い糸をつくる」
――最後に、クリエイティブに挑戦したい方や、いまの環境で悩んでいる方へメッセージをお願いします。
大切にしている言葉があります。かつてIBFがご支援したクライアントでもあるグンゼ様の、創業の精神に由来する言葉です。「善い人が良い糸をつくる」。人を大切にするところからしか、本当に良いものは生まれない。そういう考え方だと受け取っています。
その言葉に触れたとき、深く共感しました。テクニックや優しさなど表面的なことだけでなく、つくり手としての姿勢、人間性、物事への深い考えがあってこそ、本当に良いものが生まれる。「糸」を「クリエイティブ」に置き換えても、そのまま当てはまると感じます。
この「善い」「良い」という言葉には明確な定義がなく、人それぞれ立場や状況によって解釈の余白があるところも好きです。だからこそ、「“善い人”とは何か」「“良い仕事”とは何か」を、日々問い続けながら仕事をしています。この考えに共鳴して、戦略的なクリエイティブに挑戦したい方と、一緒に働けることを楽しみにしています。
※グンゼ様の創業の精神と、この言葉が生まれた背景については、同社の公式サイトで詳しく紹介されています。
https://www.gunze.co.jp/special/history
■ クリエイティブディレクターを募集しています
クリエイティブ事業部では、事業成長に伴走するクリエイティブディレクターを募集しています。ディレクター経験者はもちろん、これからディレクターを目指したい方も歓迎しています。
制作物を納めて終わりではなく、企画と成果の両方に踏み込んで関わりたい方は、まず話を聞きに来ていただければと思います。
▼ 採用情報はこちら
https://www.ibf-saiyou.jp/
■ 編集後記
Kさんについて、正直に申し上げると、取材前は違うイメージを持っていました。クリエイティブ事業部の責任者ですから、「センス」や「感覚」で判断するタイプの方なのだろうと勝手に思っていたのです。
実際に伺った話は、その予想とはまったく違いました。
同じ土俵で競わないために実務経験を先につくった学生時代から、素朴なサイトの売上を見てディレクターへ転身した判断、感覚で進めていた自分を捨ててデザインを分解し言語化するに至った過程、そして採用で人間性を見るという基準まで、すべてが「一本の線」でつながっていました。経歴も思想も、驚くほどロジカルだったのです。
その姿勢がいちばん形になっているのが、社内に蓄積されている「クリエイティブのナレッジ」だと思います。私も時折参照していますが、そこに蓄積されているのは個人のメモではなく、既存のお客様への品質を担保し、IBFという会社の知見を次の担当者へ引き継ぐための土台になっています。
当社の『IBF AIサーバー』※にも、Kさんが体系化してきた設計理論やフレームワークが機能として組み込まれています。「言語化して残す」というKさんの地道な作業が、会社の資産として積み上がっているのを実感します。
部署が違えば、大切にしている価値観も、そこにたどり着くまでの判断や過程も違うはずです。次回も、別の事業部で働くメンバーに話を伺います。IBFという会社を、一つの理念ではなく、それぞれの現場が重ねてきた判断の集まりとしてお伝えしていきたいと思います。
※「IBF AIサーバー」とは、データの統合基盤システム、AI連携、社内育成プログラム、有人サポートを組み合わせた、IBF独自の伴走型マーケティング支援サービスです。現在は既存クライアント様向けに限定して提供しています。